カズーの映画感想ブログ

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「ファーストマン」人類の飛躍の裏にある一人の人間の物語

原題:FIRST MAN

監督:デイミアン・チャゼル

出演者:ライアン・ゴズリングクレア・フォイ

上映時間:141分

 

〜人類の飛躍の裏にある一人の人間の物語〜

1960年代アメリカで空軍のテストパイロットであるニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は娘を幼くして失い、悲しみにくれる。

広告を見ていたニールはNASAが宇宙飛行士を募集していることを知り、応募する。

選抜された彼は宇宙センターで訓練を受けながら宇宙を目指す。

 

以下一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

概要

監督は「セッション」、「ララランド」とミュージカルや音楽映画に定評のあるデイミアン・チャゼルが担当し、同じく「ララランド」のライアン・ゴズリングが主演をしている。

予告を見るだけでは「アポロ13」のように宇宙に行き、そこでトラブルが起きて解決する感動作と思っていたが、今作はニール自身の娘を失う喪失感や心の葛藤がメインの軸となっている。

 

過去作との違い

過去デミアン監督の作品では迫力ある音楽が流れて、音楽により見ている側の気持ちも揺さぶられてきたが、今回は宇宙とニールの心をテーマにしているため、トラブルが起きるシーンであっても音楽はほとんどない。

ニール自身も様々な要因で心が不安定になっていくので全体的に静かなまま物語は進んでいく。

激しいシーンがなくまるでドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティを感じるのでそういう変化を求めている人からすれば少しおもしろくないのかもしれない。

 

ニールの人物像

しかしその当時のことを知らない自分のような世代から見れば月に初めて降り立ったアメリカ人としかニール・アームストロングのことを見ていなかったが常に冷静で、月に行くだけの優秀さがあることと娘を失い、事故で仲間たちを失っていく中で言葉にならない感情がライアン・ゴズリングの演技から見れていい。

 

妻の存在

そしてもう一つの物語のキーとなる人物が妻のジャネット(クレア・フォイ)である。

彼女は普通の穏やかな生活を目指していたが夫が宇宙飛行士になり死ぬかもしれないリスクがありながらも二人の息子を支えながら夫を支えながら生活をしている。

しかしついにニールが月に向かう最後の日に荷物を準備するフリをして家族と向き合わない夫に「息子たちにきちんと話をして」と怒りを爆発させるシーンは見ていて胸にくる。

周りの男たちがまるでおもちゃに夢中になる子供のようなのに対し、一番大人で肝の座っている人物であった。

 

全体を通して

今作は実話を基にしているだめ、結果やそのあとの人たちがどうなったのかは調べたらすぐに出てくるのだがその偉業の裏には犠牲になった人たちや宇宙に行くことへの批判などの時代背景、ニールの心境など目にいきにくいところを鮮明に淡々と見ることができる。

全体的に静かに物語が進みアップのシーンが多いが、月で娘のブレスレットを手放すシーンとラストの隔離されたニールに妻が会うシーンが今までのまとめとしてすごくふさわしく、感動的な余韻に浸れる終わりになっている。