カズーの映画感想ブログ

映画をゆるく独断と偏見で紹介

「SING/シング」動物たちが奮闘するミュージカルアニメーション

原題:SING

監督:ガース・ジェニングス

出演者:マシュー・マコノヒーリース・ウィザースプーン

上映時間:108分

 

〜動物たちが奮闘するミュージカルアニメーション〜

動物たちが普通に暮らす世界で活気のなくなって劇場を経営しているコアラのバスタームーンは以前の活気のあった劇場に戻すべく歌のコンテストを開催する。

その審査で残ったのは様々な問題を持つ動物たちだった。

 

 

以下一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

概要

 

銀河ヒッチハイク・ガイド」のガース・ジェニングス監督とミニオンのイルミネーションのミュージックアニメ。

ストーリーは挫折をしている動物たちが歌のコンテストにより各々の歌の才能を見出しつつ一つになるというよくある内容になっている。

それぞれの挫折がゴリラのジョニーの家族との和解やハリネズミのアッシュの失恋、象のミーナの内気で自己表現の欠如など見ている側も共感できる問題が多く、それぞれが歌の力で前向きに進んでいく。

なので凄く内容が分かりやすく、ストーリーのテンポがいい上に笑いあり感動ありになっている。

上映時間もちょうどよく見やすい。

 

作品を盛り上げる曲

 

作品のタイトルにもなっている通り作中に出てくる歌は『Call Me Maybe』/カーリー・レイ・ジェプセンや『Stay With Me』/サム・スミス、『Bad Romance』/レディー・ガガなどどこかで聞いたことのある曲たちが64曲も登場し。動物が歌うことでミュージカルのような高揚感を得ることができた。

個人的にお気に入りのキャラクターはハリネズミのアッシュで凄く色気のある歌い方。

日本の曲もきゃりーぱみゅぱみゅの曲が「にんじゃりばんばん」「きらきらキラー」「こいこいこい」と3曲も使われているのも日本人としては嬉しいところ。

 

声優

声の声優もマシュー・マコノヒーリース・ウィザースプーンなど豪華声優が多数でてキャラクターの声に違和感がなく、歌に入るまでの流れがよかった。

特にネズミのマイクは「テッド」のセス・マクファーレンは憎たらしいキャラクターをうまく演じている。

日本語吹き替え版はまだ視聴していないのだが、MISIA大橋卓弥などのアーティストを起用し、吹き替えにも力を入れている。

 

全体を通してまとめ

続編も公開が決定し、ストーリーが前向きで短く落ち込んだ時に見るのに向いている明るい映画になっている。

作品に登場している月の飾りが最後のニーナの歌によって壁が壊れたことによって外の満月が現れる演出にグッときた。

綺麗な終わり方ではあるが、ネズミのマイクが続編でも問題を起こしそうで続編がとても気になった。

 

「コンテイジョン」現実に起こるパンデミックへの警告

原題:CONTAGION

監督:スティーヴン・ソダーバーグ

出演者:マット・デイモンマリオン・コティヤールets

上映時間:106分

 

〜現実に起こるパンデミックへの警告〜

香港に旅行に来ていたペス(グウィネス・パルトロー)は元恋人と密会していたが咳が止まらなくなる。

その頃東京・ロンドンでも同じような症状がで始める。

これにいち早く気づいたフリーのジャーナリストのアラン(ジュード・ロウ)は新種の伝染病ではないかと疑い始める。

そしてその病は少しずつ世界に広まっていき…

 

 

以下一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

概要

オーシャンズ」シリーズで知られるスティーヴン・ソダーバーグマット・デイモンマリオン・コティヤールジュード・ロウグウィネス・パルトローなどの超豪華俳優陣と描くパンデミックサスペンス。

本作は実際感染が起こった場合、どのような経路で広がりどのように人々はパニックになっていくのかをリアルに描いている。

そのためカメラワークもリアル寄りにあまり動き回らずその場にいる第三者目線のように静かに傍観しているような感じになっている。

音楽もほとんどなく淡々とドキュメンタリー風に話が続くのは退屈に感じるかもしれないがよりリアルさをだしている。

 

現実的パンデミック

 

こういったウイルスものはゾンビになったり、唐突に軍隊や悪役が出て、ド派手なアクションに繋がるったりするがそれもなく、悪役に近いとすればジャーナリスト兼ブロガーのアランがなんの科学的根拠もない嘘の情報を流し混乱していくのが他のパンデミックものと大きく違う。

何より「人は1日に顔を2000〜3000回触っている」ことやそれぞれの都市人口や感染者の触った箇所のアップなどどこをどのようにして感染していくのかがわかりやすくリアルに表現されていて、まるでパンデミックが起きた時に対する警告にも見える。

 

俳優陣

今作は上記にも書いたような主演級の俳優たちが多く出演しているがそれぞれ全員が深く関わり合うのはなく、感染して妻を亡くし娘を守ろうとする一般市民をマットデイモンが、感染病を研究し対策していく医師をローレンス・フィッシュバーンがなどそれぞれがまそれぞれの役割をうまく演じている。

特にミアーズ医師を演じるケイトウィンスレットが感染して少しずつ弱っていく絶望感は素晴らしい。

 

全体を通して

他のパニックパンデミック物と違い、リアルな感染経路や拡散状況などリアルすぎて少し怖く感じたがラストはワクチンが完成し希望のあるものになっている。

物語の始まりが1日目でなく、ペスが症状が出た2日目からスタートしてラストに感染した原因の1日目をも持ってくるのはよかった。

2020年3月現在では新型コロナウイルスが流行し、もはやこの物語がフィクションのものではなくなっている。

実際嘘の情報が出回り買い溜めなどがおこっている。

この映画を少しでも教訓にしていきたい。

 

 

「ウォーターワールド」緑の土地を目指す海上スペクタルアクション

原題:WATERWORLD

監督:ケヴィン・レイノルズ

出演者:ケヴィン・コスナーデニス・ホッパー

上演時間:135分

 

〜緑の土地を目指す海上スペクタルアクション〜

環境破壊により北極や南極の氷が溶け、全ての地上が海に沈んだ未来の地球。

生き残った人類は海上に要塞を作り生活していた。

 

ここから一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

概要

「ボディーガード」のケビン・コスナーと度々組んでいるケビン・レイノルズによるアクション映画。

ユニバーサルスタジオジャパンのアトラクションの一つにもなっているので有名な作品だが、ストーリーはアクションのものと少し異なっている。

 

ストーリー性

 

主人公マリナー(ゲビン・コスナー)は孤独に旅をしている少しヒール感がある男でヒロインヘレン(ジーン・トリプルホーン)と少女エノーラ(ティナ・マジョリーノ)と出会い、少しずつ心を開いていき悪の親玉ディーコン(デニス・ホッパー)を倒して緑の大地グリーンランドを見つけるというありきたりなストーリーで世紀末の設定と合わせて見ても、海のマッドマックスという感じが強い。

キャラクターもマリナーとディーコンくらいしか印象に残るものはおらず、ヒロインのヘレンは美人だがあまり目立たない。

因縁のディーコンの倒し方もあっけないものとなっていてその点では特に印象に残る点はなかった。

主人公が半魚人になっている原因とかエノーラがどのようにあの基地に来たのかなどの説明がないのも疑問が残る。

 

エンタメ性

しかし今のアクション映画はCGを多用した作品が多く、エンターテインメント性はあるが

リアリティのある爆破のシーンや動きが少なくなっている今では新しさすら感じる。

悪役のディーコンは名悪役デニス・ホッパーが演じ、極悪人でありながら言い回しや動きにコミカルさがあり、何故か憎めないようなキャラになっている。

さらに人々が海の上で生きていく為に使っている道具や基地がなかなか面白い点と敵はなぜ水上バイクがあれだれ乗り回せるだけのガソリンがあるという理由がタンカーが本拠地だと

納得がいく

ただ資源がないにもかかわらず無駄打ちばかりしたりするのは笑った。

 

全体を通して

大規模な製作費がかかって、アクションもB級感があり終わりもこれからもマリナーの旅は続くという感じの終わり方だが、コケてしまい続編がないのが少し残念な感じ。

ありきたりなストーリーと無駄なシーンの多さからあまり評価は良くないがB級作品として見るとそこまで悪くない。

物語的にもう少し短くまとめた方が見易くて面白くなると思った。

それを踏まえるとユニバーサルのアトラクションは完成度がほんとに高い笑

 

 

「ファーストマン」人類の飛躍の裏にある一人の人間の物語

原題:FIRST MAN

監督:デイミアン・チャゼル

出演者:ライアン・ゴズリングクレア・フォイ

上映時間:141分

 

〜人類の飛躍の裏にある一人の人間の物語〜

1960年代アメリカで空軍のテストパイロットであるニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は娘を幼くして失い、悲しみにくれる。

広告を見ていたニールはNASAが宇宙飛行士を募集していることを知り、応募する。

選抜された彼は宇宙センターで訓練を受けながら宇宙を目指す。

 

以下一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

概要

監督は「セッション」、「ララランド」とミュージカルや音楽映画に定評のあるデイミアン・チャゼルが担当し、同じく「ララランド」のライアン・ゴズリングが主演をしている。

予告を見るだけでは「アポロ13」のように宇宙に行き、そこでトラブルが起きて解決する感動作と思っていたが、今作はニール自身の娘を失う喪失感や心の葛藤がメインの軸となっている。

 

過去作との違い

過去デミアン監督の作品では迫力ある音楽が流れて、音楽により見ている側の気持ちも揺さぶられてきたが、今回は宇宙とニールの心をテーマにしているため、トラブルが起きるシーンであっても音楽はほとんどない。

ニール自身も様々な要因で心が不安定になっていくので全体的に静かなまま物語は進んでいく。

激しいシーンがなくまるでドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティを感じるのでそういう変化を求めている人からすれば少しおもしろくないのかもしれない。

 

ニールの人物像

しかしその当時のことを知らない自分のような世代から見れば月に初めて降り立ったアメリカ人としかニール・アームストロングのことを見ていなかったが常に冷静で、月に行くだけの優秀さがあることと娘を失い、事故で仲間たちを失っていく中で言葉にならない感情がライアン・ゴズリングの演技から見れていい。

 

妻の存在

そしてもう一つの物語のキーとなる人物が妻のジャネット(クレア・フォイ)である。

彼女は普通の穏やかな生活を目指していたが夫が宇宙飛行士になり死ぬかもしれないリスクがありながらも二人の息子を支えながら夫を支えながら生活をしている。

しかしついにニールが月に向かう最後の日に荷物を準備するフリをして家族と向き合わない夫に「息子たちにきちんと話をして」と怒りを爆発させるシーンは見ていて胸にくる。

周りの男たちがまるでおもちゃに夢中になる子供のようなのに対し、一番大人で肝の座っている人物であった。

 

全体を通して

今作は実話を基にしているだめ、結果やそのあとの人たちがどうなったのかは調べたらすぐに出てくるのだがその偉業の裏には犠牲になった人たちや宇宙に行くことへの批判などの時代背景、ニールの心境など目にいきにくいところを鮮明に淡々と見ることができる。

全体的に静かに物語が進みアップのシーンが多いが、月で娘のブレスレットを手放すシーンとラストの隔離されたニールに妻が会うシーンが今までのまとめとしてすごくふさわしく、感動的な余韻に浸れる終わりになっている。

 

 

リチャードジュエル

原題:RICHARD JEWELL

監督:クリントイーストウッド

出演者:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル

上映時間:131分

 

〜人は見た目できまってしまうのか〜

1996年アトランタのライブ会場で警備員をしていたリチャードジュエルは不審なカバンを発見する。

その中身を不審に思ったリチャードは周りを避難させ、爆発による被害を防ぐ。

一時は英雄のように扱わていたが次第に新聞社とテレビ局が犯人のように扱いだし、ついにFBIも疑いだし…

 

以降一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

イーストウッドの作風

 

アメリカンスナイパー」、「運び屋」のクリント・イーストウッドによる記念すべき40本目の作品。

イーストウッドといえば西部劇やダークヒーロー的警官などの架空のヒーローのイメージが強いが、最近では実話が多く、一般人の中のヒーローが多くなっている。

これはヒーローは身の回りにいるとともに、そのヒーローの裏には隠れた真実と理不尽さがあると感じる。

 

リチャードの性格

今作のリチャード・ジュエルはまさに今までの作品の中でもそのメッセージ性を感じる。

リチャードは警官を目指し、一途にその仕事が素晴らしい仕事と信じる男だが、そんな彼にFBIは見た目が太っており親と同棲し、警官を目指す異常者とプロファイリング、記者は彼を爆弾魔と書き、世間の非難を受ける。

しかしそんな状況においても、馬鹿正直といえるほどに彼らのことを信じ、語尾にはサーとつけるほど自分の信じたものは正しいと思っている。

 

フィクションとの比較

母子家庭で親と同居、今の仕事に不満があり夢見ている仕事を一途にしんじている。

これはある意味では「ジョーカー」のアーサーと状況が似ているのでFBIのプロファイリングで疑うこと自体はおかしくはないが、リチャードにたいしてのミランダ警告を無視した内容でサインをさせたり、ビデオ撮影はあまりにも理不尽である。

 

リチャードの信念

その理不尽の中でもリチャードは彼の無実を信じながら懸命に無実を調べてマスコミにも対抗する弁護士の言葉よりもFBIの言うことを一途に聞くのを見て苛立ちを覚えるが、リチャードが最後FBIに向けて、「証拠があるのか?僕のような事案を残してしまったら、誰も人を助けなくなってしまう」のセリフに自分が感じていた苛立ちはこの物語でのFBIの行動は異常で信じられなかったことでリチャード自身は最後のギリギリまでFBIや警察は目指すべき素晴らしい職業だと信じ続けたからこそのセリフであり、リチャードの正義感の集大成でもあるようなセリフで熱くなった。

 

全体を通して

イーストウッドの映画では登場人物が叫んだり、怒鳴ったりするシーンはなく、この映画も爆弾が爆発するシーン以外は静かに物語が進んでいく全体的に静かな映画だが胸に深く刻まれるような熱さと臨場感がある。

ラストで犯人が見つかり、リチャードの無実が完全に証明されるが、リチャードが45歳の若さで亡くなってしまう終わりも現実ならではの理不尽がある。

 

ザ・アウトロー

原題:DEN OF THIEVES

監督:クリスチャン・グーデガスト

出演者:ジェラルド・バトラー50 Cent

上映時間:140分

 

〜48分に1回は銀行強盗が起こるロサンゼルスでのクライムアクション〜

銀行強盗が多発するロサンゼルスで保安官ニック(ジェラルド・バトラー)はドーナツ屋での銀行輸送車強盗である大型の銀行強盗の計画を知る。

それは様々な未解決銀行強盗の容疑者であるメリーメン(パブロ・シュレイバー)一味であり、彼らはどこからか3000万ドルを盗み出そうとするものであった。

メリーメン一味が練る精密で綿密な計画とニックたちの攻防が始まる…

 

 

以下一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

概要

「300」のジェラルドバトラー主演で監督は「エンドオブキングダム」の脚本で今作が初監督のクリスチャン・グーデガスト、助演男優に50 Centによる「ヒート」のようなクライムアクション。

 

作品特徴

 

ジェラルドバトラー主演の段階で凄い安心感とどんぱちが予想されていたがやはり後半の銃撃さんは良かった。

しかし今回は銃撃戦自体は後半の10分くらいだけで銃撃戦がメインというよりメリーメンやニックのキャラクターや計画に焦点を当ててるような印象を受けた。

所々荒いところはあるがニックとメリーメンがガンショップやホテルらしき所などで少しずつ近づいていく所は緊張感があり、ラストのバーのラストは少し伏線が弱いと感じながらも「ソードフィッシュ」をみた時のようなやられた感があった。

 

それぞれのキャラクター

 

ニックのキャラクターもガサツで常にオーバーリアクションでありながら捜査の指揮を取り、ベテラン刑事感がでて、自分はこういったキャラは好きだがあまり評判は良くなさそう笑

途中浮気がバレて離婚のシーンがあったが後半に何か復縁とかの展開があるのかと期待していたが特になく、それにしてはそのシーンが長く感じた。

メリーメンに関しては軍隊上がりで無抵抗の一般市民には絶対攻撃しないのでギャングの銀行強盗との違いは出ていたが、キャラクターの掘り下げはもう少し欲しかった。

 

全体を通して

全体的にコメディ要素はなくシリアス全開と登場人物のほとんどがゴリゴリの男で熱い映画ではあるが少し重たい印象。

しかし、銀行強盗の流れはスムーズでグダグダと計画を練るシーンが続くわけではない。

銃撃シーンも「ヒート」まだはいかないまでも白熱しながら撃たれた場面ではすごく痛そうな演技がいい。

ただよく言われていることだが邦題が薄っぺらくてB級映画の印象を与えてしまうが骨太なクライムアクションである。

現在、Amazonプライムで公開中なので是非見てほしい。

 

 

追記

アクション映画はどこがどうが説明するのが難しい笑笑

 

 

「リグレッション」邪悪な者とはなんなのか?

原題:REGRESSION

監督:アレハンドロ・アメナーバル

出演者:イーサン・ホークエマ・ワトソン

上映時間:106分

 

〜邪悪な者とはなんなのか?〜

1990年アメリカのミネソタ

刑事のブルース(イーサン・ホーク)は父親から性的虐待を受けた少女アンジェラ(エマワトソン)の事件を扱うことになる。

しかし、虐待した父もアンジェラも記憶が曖昧で事件が難航する。

そこで有名な心理学者ケネス(デヴィッド・シューリス)の力を借り、記憶を辿りながら事件を追うのだか…

 

 

以降一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

概要

 

アザーズ」のアレハンドロ・アメナーバルと「ガタカ」のイーサン・ホークによるサスペンスミステリー。

実際にあった事件を元にしている本作だが、1980年から1990年はアメリカでは実際に悪魔信仰による虐待が行われていた。

日本ではあまりキリスト教が主流でないため、悪魔と言ってもイメージしにくいがアメリカでは大きな社会問題となっていた。

そして今作ではその悪魔信仰を取り扱っているのだが、非科学なことに加えてアンジェラや父の記憶が曖昧であったり、ブルースが感情的になりやすい性格で登場人物の誰も信用できない状態で物語は進んでいく。

特に主人公のブルースは妻と別居していること以外の詳細がないため主人公に感情移入ができない。

これはアメナーバル監督が意図的に事件以外のことを削っているそうだ。

それにより見ている側もだんだんと孤立していくような不安感と物語が進んでいるのかわからなくなってくる。

 

キャラクター

 

そんなブルースを演じたイーサンホークは見事に感情的で気性の荒い性格と段々と恐怖で精神的に不安定になっていく様子を演じている。

しかし特に見どころなのは最初は内気で複雑な内面を持っており、一見素直で善良な人間に見えるアンジェラを演じたエマワトソンには驚愕した。

この物語は心理療法などの科学的なことと悪魔信仰やキリスト教などの非科学的な事柄が複雑に絡み合いながらもどちらを信仰する登場人物たちの中でどちらも信用していないブルースが一見見ている側に近いがブルースにも同意できない複雑な気持ちになる。

 

全体を通して

この映画のタイトルになっている「リグレッション」は退行を意味しており、劇中に出てくり記憶を呼び覚ます退行理論を意味しているが、真実は刑事と学者の記憶の植え付けというテーマが隠れている。

全体的にジメジメとしたホラーっぽいサスペンスだが、エマワトソンの演技により上質なミステリーにもなっている。

グッドライアー偽りのゲーム

原題:The Good Liar

監督:ビル・コンドン

出演者:ヘレンミレン・イアンマッケラン

上映時間:109分

 

〜老人たちで行われる濃厚な大人の駆け引き〜

老詐欺師のロイは出会い系サイトで未亡人資産家ベティとしりあう。

彼女の資産を奪うべく近き、紳士の振る舞いで言葉巧みに騙していき、徐々に心を許していくベティーであったが…

 

以後ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

作品概要

「シカゴ」「グレイテスト・ショーマン」の脚本のビル・コンドンが監督による大人の騙し合いによる濃厚ミステリー

「クイーン」でオスカーを受賞したヘレンミレンと「ゴッド・アンド・モンスター」「ロードオブザリング」で2度ノミネートを果たしたイアンマッケランのダブル主演で初共演作。

 

それぞれの嘘

タイトルと雰囲気から嘘がメインになり、話が進むにつれ、ロイの嘘と性格がどんどんとでてくるが、その嘘をつく流れや残忍な行動を見せつけらる。嘘がわかってくるにつれて純粋なベティがどうなっていくのかと心配になってくる。

しかし物語が進んでいくにつれ、実は嘘をついているのはイアンマッケランだけでなく、ヘレンミレン演じるベティを含む登場人物全てが嘘をついているのがわかってくる。

ベティは実は息子と二人で暮らす寂しい老人でなく、ロイに復讐を誓う女性で、息子も探偵、ロイの友人も実はベティと繋がっている。

ここですこしずつタイトルのグッドライアーの意味がわかりだしてくる

登場人物たちそれぞれの嘘が明らかになっていくなかでただの騙し合いだけでなく、人間関係が絡み合い、戦時中ナチス関連でロイは別人になっていることや過去ベティに酷いことをしていることがわかってくるにつれ、ミステリーでもありサスペンス要素を含んだ復讐の物語だということがわかる。

 

伏線とヒント

段々とクライムサスペンスのようになるが違和感がなく物語が進んでいくのはみごとな転調である。しかもベティとロンがみる映画が「イングロリアスバスターズ」やベティの家に怪しい車が来る、散髪など所々にヒントが隠されており、行動全てに意味があるのはすごい。

 

ラスト

この物語は人は誰しも大なり小なり嘘をつくものだが、その嘘はいずれ自分に返ってくるのが痛いほどわかり、人を騙し続けるロイに始めはきらいになっていたが、最後は同情をするとともに、ヘレンミレンの演技がすごすぎて最終的にはベティがすごく怖くなった笑

ラストでは今までの暮らしが演技とわかり、家族友人に囲まれ、楽しそうにパーティーをするが幼い3人姉妹をみて、すこし不安げになる。

 

 

全体を通して

名優2名による年寄り同士の大人の駆け引きと騙し合いの演技に引き込まれ、なおかつ演技に劣らないほどの過去の出来事が絡み合い、ラストへの伏線を上手く回収していく物語の展開が凄く見応えがあるあり引き込まれた。

上質のサスペンスで秋の夜長にまたゆっくり見たい作品。

「スケアリーストーリーズ〜怖い本〜」全米の子供達にトラウマを与えた児童書ホラー

原題:Scary Stories to Tell in the Dark

監督:アンドレ・ウーブレダ

出演:ゾーイ・コレッティ・マイケル・ガーザ

上映時間:108分

 

〜全米の子供達にトラウマを与えた児童書ホラー〜

1986年のハロウィンの夜

ペンシルベニアの田舎町でモンスター好きで作家志望の少女ステラは友人達とともに不良のトミーにいたずらをし、一台の車に逃げ込む。

その車にいた他の街から来たラモンが匿ってくれたがまたトミーに見つかり、らもんとともに幽霊屋敷に逃げ込む。

ステラはそこで「幽閉され自殺したサラに物語をせがむとそれが最後に聴く物語になる」と語る。

ステラたちは隠し扉でサラの本を見つけ、ステラはサラ、物語を聞かせてと呟き…

 

 

以下一部ネタバレあり

 

 

 

 

 

概要

 

「パンズラビリンス」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デルトロがプロデュースし、原作は現実の事件を彷彿とし、スティーヴン・ガンメルの不気味な挿絵が子供達のトラウマとなり図書館に置くことを禁じられた「スケアリーストーリーズ」シリーズ。

監督は「ジェーン・ドウの解剖」のアンドレ・ウーヴレダルという豪華な組み合わせの作品。

内容はどこかで見たような普通の呪い系で大音量の音で脅かしてくる映画だが、一度観ると頭から離れなくなるモンスターたちとジメジメした雰囲気があいまって、子供が見ればトラウマ必須の作品になっている。

 

詳細とモンスター

 

原作はシリーズ物なのだが、今作はオムニバス形式にせず、一つの作品に纏まっており見やすくなってはいるが、それぞれの物語が弱くなってしまっているのは否めない…

しかし1986年はアメリカではベトナム戦争や大統領選挙激怒の時代でゾンビやモンスターものもブームになっていて、雰囲気のマッチングはいい。

それとモンスターのデザインは3歳の時から怖い話を読んでいたモンスターオタクのギレルモ・デルトロらしく個性豊かで恐ろ違モンスターたちに仕上がっている。

チェックシャツでお腹に大きな穴が開き、とうもろこしばたけでじわじわ追いかけてくるカカシのハロルドやバラバラになって、「ミィタイドウティウォカァ」と言いながらラモンをおいかけてくるジャングリーマンなど様々なモンスターが出てくるがやはり一番印象があるのはステラの友人の一人であるチャックを病院で追いかけ回す青白い女だった。

警報で赤くなった病院の廊下を黒い目と髪で青白い顔でぶよぶよの体で常にほくそ笑みながら近づいてくるのはなかなかの恐怖。

 

全体を通して

よくあるようなモンスターホラーでありながら、モンスターのデザインがよく、謎を解くミステリー要素もあるホラー映画になっている。

ラストはすこし感動的な終わり方できれいにまとまっているが終わり方はなんか続編がありそうな終わり方になっている。

 

追記

観賞後夢に青白い女が出てきてトラウマになった笑

「ミッドサマー」白夜で行われる失恋ホラー

原題: Midsommar

監督:アリ・アスター

出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー

上映時間:147分

 

〜白夜で行われる失恋ホラー〜

家族を事故で亡くし、鬱状態の主人公のダニーは恋人や友達たち4人と共に、北欧のスウェーデンで90年に一度行われる奇祭に参加することになる。

美しい湖と木々に囲まれ、白夜で常に太陽が沈まない楽園のような場所だがしだいに…

 

 

以降一部ネタバレあり

 

 

 

概要

『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスター長編2作目。

 予告編ではフェスティバルホラーと表現されていだが、監督自身も言っているがこれは失恋の物語だった。

 劇中ではヘレディタリー同様不気味な音楽が流れ、白夜で今が朝なのか夜なのかわからなくなり、まるで夢を見ているかのような雰囲気が漂っており、ゆっくりと引き込まれていく。

風景やホルガの人々も美しいが常に不穏な空気が流れており、老人が崖から飛び降りる儀式の様子や求愛の様子が描かれたタペストリーから徐々に怖さが増していき、そして友達たちが一人一人殺され、カルト宗教の実態が見えてくる。

 

ダニーの心境の変化

 

ここまで見ているとまさにフェスティバルホラーだが、序盤から主人公のダニーと恋人のクリスチャンには溝ができつつあり、失恋間近の雰囲気が所々にみれていく。

人々に囲まれ、楽しいはずの祭りにも関わらず孤独感を感じていくダニー。

 クリスチャンとの恋人関係にも亀裂が大きくなっていき、徐々にダニーは自分に共感して一番に理解しているのは友達でも恋人でもなくホルガの人々だと理解していく。

普通に見れば宗教にのめり込んでしまうようにも見えるが、恋人が一番大切だと思い込んでいる状況からの救いで、本当は自分には何が必要を気づき、ラストではホルガの娘との行為をみてしまい、クリスチャンを殺す判断をする。

そのことで初めてのダニーの笑顔にらって終わるのがハッピーエンドにも感じる。

 

全体を通して

この映画はやはり男女で評価が全然違い女性からの評価は高いみたいだ。

女性からすれば、彼氏との決別をすることができ、主人公の精神が安定する終わりに見える。

やはり男からするとラストの焼かれる展開は怖い笑

内容がないようなだけに北欧の文化や神話の知識がないと完全には楽しめないようになっているのでパンフレットの解説や本で前知識を入れてみた方がいいと思う。

夢のような感覚になる映像がおおいので少し長くは感じてしまうが、新しいタイプのホラーなので是非見て欲しい作品だが、グロいシーンが出てくるので注意は必要